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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)97号 判決 1954年7月06日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鈴木義男、同河野太郎の上告趣意第一点について。

所論引用の大審院判例は、「罰金を完納すること能はざる場合に於ける労役場留置の期間を定むるの方法に付ては、何等規定するところなきを以て、裁判所は単に一定の日数を以て右期間を定め得るは勿論」であって、この場合でも「罰金の言渡を受けたる者若し其の幾分を納むるときは、罰金額と留置日数との割合に応じ、其の納むる金額に相当する日数を控除して之を留置すべく」「其の罰金の幾分を納めたるときと雖、尚留置期間の全部に付之を留置するが如き不当なる結果を生ずべきものに非ざるや明なり」と判示している。この判例の趣旨は今なおこれを改める必要を認めない。さすれば原判決には所論のように違法はない。(原判決が所論のように刑法一八条六項を排除する趣旨でないことは、その理由の中に「刑法一八条に則り」と判示していることからも明らかである。)従って原判決の違法を前提とする所論違憲の主張は採用できない。

同第二点について。

論旨は量刑不当の主張であるから上告適法の理由にならない。

なお記録を調べてみても刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条に則り裁判官全員一致の意見を以て主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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